第 2 章 タイプセッティングの調整 9
2.6 画像と表の調整
画像と表のレイアウトは文書のタイプセット仕様によって規定されます. LATEXパッケージや コマンドを用いることで注釈(キャプション)のフォーマット変更,画像,表,文字のレイアウト 調整,画像形式に伴う問題の回避,ページ幅を越えたオブジェクトの扱い等が可能になります. ま たフローティング形式の画像や表には特別な配慮が必要となる場合があります. 適切なTEXコマ ンドを本文に埋め込むことでこれらの問題を解決できます.
2.6.1 キャプションの調整
文 書 に 画 像 や 表 を 含 む 場 合, そ れ ら に 対 す る 注 釈( キ ャ プ シ ョ ン )や タ イ ト ル に 関 し 特 別 な フォーマット調整を行いたいというニーズが生じます. captionパッケージ(118ページ参照)を 使うと,キャプション用のフォント属性を変更できます. また画像や表をフロート型にする場合,
captionパッケージでは複数行にまたがるキャプションやタイトルを中央揃えにすることができま
す(一行の場合は自動的に中央ぞろえとなります). またsubfigパッケージ(174ページ参照)を 使うと複数の図に対し一つのキャプションを設定できます.
LATEXはフローティングオブジェクト(画像,表)とキャプション(上部または下部)間のスペー スの量を\abovecaptionskipマクロと\belowcaptionskipマクロによって規定します. 多く のタイプセット仕様がこれらのマクロを利用しています. 例えばsebase.clsは上下10ptの値を 設定しています. Style Editorの場合これらの値を変更することはできませんが,代わりに文書の タイプセット仕様と結び付いた外部マクロを追加することによってそのスペース量を調整できま す. 別の方策としては,プリアンブルを編集することによって文書中に含まれるすべてのフロー ティングオブジェクトに対するスペース量を変更できます.またフローティングオブジェクトの前 後にTEXコマンドを挿入すれば,スペースの量を個別に調整することも可能です.
フローティングオブジェクト用のキャプション中に数式を含める場合, LATEXコマンドを正確に 使わないと問題が生じる場合があります.
2.6 画像と表の調整 51
Table 1: According to the identity sin2θ+ cos2θ= 1 θ sin2θ cos2θ
0 0 1
π
4 1
2 1
2 π
3 3
4 1
4
この例ではLATEXの\protect文が用いられているためキャプション中の数式は正しく表示され
ています. TEXフィールド内に数式を設定する場合は以下の例を参考にしてください.
◮フローティングオブジェクト用キャプションに数式を含める 1. 表を作成します:
(a)表を作成したい位置にカーソルを位置付け,4行3列の表(LaTeX用)フラグメント を挿入します.
(b)行と列の数を適宜調整,表の内容も編集します.
(c)文書の内容を保存します. 2. キャプションを作成します:
(a)Blank - Standard LaTeX Articleシェルを用いて新たな文書を開きます.
(b)新たなパラグラフ(段落)内にキャプション用テキストを入力します.
(c)セクションタグをそのパラグラフに設定します.
(d)表を含む文書と同じファイルタイプで文書を保存します.
(e)テ キ ス ト エ デ ィ タ を 用 い て そ の 文 書 を 開 き, キ ャ プ シ ョ ン の 部 分 ま で ス ク ロ ー ル し ます.
キャプションは次の例のように\sectionで始まっているはずです:
\section{According to the rule $\sin ^{2}\protect\theta +\cos ^{2}\protect\theta =1$}
(f)sectionをcaptionに変更します.
(g)キャプションを構成するこの2行をクリップボードにコピーします. 3. キャプションを表の中に埋め込みます:
(a)表を含む文書に戻ります.
(b)Captionと表示されたグレイボックスの右側にカーソルを位置付け,プロパティを選択
します.
(c)フィールドの全内容を選択します.
(d)クリップボードの内容をフィールド中に貼り付け,OKボタンをクリックします. 4. 文書をセーブしタイプセットします.
◮フローティングオブジェクト用キャプションのフォント属性を変更する 1. 文書にcaptionパッケージを追加します.
2. タイプセットツールバーのオプションとパッケージボタン をクリック,またはタイプ セットメニューからオプションとパッケージを選択します.
3. パッケージオプションタブを選択します.
4. 利用中のパッケージのリストからcaptionを選択して編集ボタンをクリックします. 5. v5.5をお使いの場合:
(a)カテゴリボックス中から適切なフォント属性カテゴリを選択します:
カテゴリ 制御対象フォント
Caption and label font attributes フローティングオブジェクトのキャプション とラベル
Caption font attributes フローティングオブジェクトのキャプション
Label font attributes フローティングオブジェクトのラベル
(b)オプションボックス内からフォントサイズを選択し,OKボタンをクリックします. それ以前のバージョンをお使いの場合:
(a)カテゴリボックス中からCaption font sizeを選択します.
(b)オプションボックス内からフォントサイズを選択します.
(c)カテゴリボックス中からCaption label attributeを選択します.
(d)オプションボックス内から適切なフォント属性を選択します.
(e)OKボタンをクリックしダイアログボックスを閉じ,操作画面に戻ります.
◮フローティングオブジェクトに対する複数行のキャプションを中央揃えする 1. 文書にcaptionパッケージを追加します.
2. タイプセットツールバーのオプションとパッケージボタン をクリック,またはタイプ セットメニューからオプションとパッケージを選択します.
3. パッケージオプションタブを選択します.
4. 利用中のパッケージのリストからcaptionを選択して編集ボタンをクリックします. 5. カテゴリボックスでCaption justification(行そろえ)を選択します.
v3.5をお使いの場合にはAlignmentを選択します. 6. オプションボックス内でCenteredを選択します.
7. OKボタンをクリックしダイアログボックスを閉じ,操作画面に戻ります.
◮複数の図に単一のキャプションを適用する 1. フローティングフレームを入力します:
(a)複数の図を配置したい位置にカーソルを位置付けます.
(b)4行3列の表(LaTeX用)フラグメントを挿入します.
2.6 画像と表の調整 53
(c)表の一つ一つのセルに図を配置するという想定で,表の構成を適宜変更します. 2. すべての図を挿入します:
(a)個々のセルに図を配置します.
(b)それぞれの図に対し:
i. 図をクリックしプロパティを選択します. ii. レイアウトタブを選択します.
iii. 位置のセクションでインラインを選択します. iv. OKボタンをクリックします.
3. キャプションを作成します:
(a)captionと表示されたグレイボックスをダブルクリックします.
(b)TeXフィールドダイアログボックス内にあるTable Captionという文字列を所定の 文面に改めます. これがすべての図を代表するキャプションになります.
(c)OKボタンをクリックします.
4. ラベルを「表」から「図」に変えたい場合:
(a)Bと表示されたグレイボックスを選択し,プロパティを表示します.
(b)\begin{table}[tbp] \centeringという文字列を
\begin{figure}[tbp] \centering に置き換えます.
(c)OKボタンをクリックします.
(d)Eと表示されたグレイボックスを選択し,プロパティを表示します.
(e)\end{table}という文字列を\end{figure}に置き換えます.
(f)OKボタンをクリックします.
5.ステップ3で作成したキャプションに加え,個々の図にもキャプションを設定したい場合:
(a)図を選択しプロパティを表示,ラベリングタブを選択します.
(b)注釈文ボックス内にその図に対するキャプションを入力します.
(c)OKボタンをクリックします.
レイアウトの調整のためには適宜キャプションの前後にスペースあるいはセルを補って調 整してください.
◮キャプション用スペース調整をすべてのフローティングオブジェクトを対象に行う 1. 文書を開きます.
2. タイプセットメニューからプリアンブルを選択し,入力ボックスの適当な場所をクリックし ます.
3. 次の行を入力します.
\setlength{\abovecaptionskip}{0pt}
\setlength{\belowcaptionskip}{0pt}
4. OKボタンをクリックします.
希望するスペース量となるまで値を調整してください.
◮キャプション用スペース調整を個々のフローティングオブジェクトに対して行う
1. フローティングオブジェクトの前の行末にカーソルを移動し,enterキーを押します.
2. TEXフィールドを挿入します.
3. 入力ボックスに次のコマンドを入力します.
\setlength{\abovecaptionskip}{0pt}
\setlength{\belowcaptionskip}{0pt}
4. OKボタンをクリックします.
希望するスペース量となるまで値を調整します.
5. デ フ ォ ル ト の 値 に 戻 す に は, フ ロ ー テ ィ ン グ オ ブ ジ ェ ク ト の 後 の 行 に カ ー ソ ル を 移 動 し, enterキーを押します.
6. TEXフィールドを挿入します.
7. 入力ボックスに次のコマンドを入力します.
\setlength{\abovecaptionskip}{10pt}
\setlength{\belowcaptionskip}{10pt}
8. OKボタンをクリックします.
2.6.2 図表周辺での文字列の折り返し
文字列を画像や表の周囲で折り返すことによって,見栄えの良い文書を作成できます. ページの側方に配置された図表を避ける形で文字列を折り返すにはwrapfigパッケージ
(188ページ参照)を使います. このパッケージは人為的にフローティング環境を作成し 画像や表を収容します. このためキャプションの設定も可能です. いま,このページにあ
るような画像の周りで文章を折り返すとしましょう. 画像は見開きページの内側に位置するように 配置しました. ただし余白領域には入り込まない設定としています. 画像の領域を避ける形で4行 の文字列を折り返させました. 具体的な手順は以下に示しますが,ポイントとなるのはカプセル化 したTEXフィールド内に埋め込まれた\begin{wrapfigure}[4]{i}[0pt]{0pt}というコマン ドです.
Choose To
Typeset/Print Print with LATEX File/Print Print without LATEX
このパラグラフではやはりwrapfigパッケージを使い, 表 の ま わ り で 文 字 列 を 折 り 返 し て み ま す. 表 は 見 開 き ペ ー ジ の 外 側 に 来 る よ う に し,今 度 は 余 白 領 域 に0.3イ ンチほどかかる設定にしています. 折り返しの行数は5 行 と し ま し た. カ プ セ ル 化 し たTEXフ ィ ー ル ド 内 に は
\begin{wraptable}[5]{o}[25pt]{0pt}というコマンドが埋め込まれています.
別のパッケージpicins(157ページ参照)はインライン画像の配置に関し緻密な制御ができます が,表についてはサポートしていません.
◮フローティングオブジェクト周辺で文字列を折り返す 1. 文書にwrapfigパッケージを追加します.
2. フローティングオブジェクトを挿入する位置にカーソルを位置付けます. 3. 次の要領でwrapfigureまたはwraptable環境を設定します.
(a)カプセル化したTEXフィールドを設定し入力ボックスに次のコマンドを入力します.